裏耶馬の郷 笑楽

河童物語

笑楽の郷には、ある物語があります。

いつもの日常とは違う世界が皆様を待ってます。
この物語は笑楽のオーナーが幼少期の実体験談です。
信じるか信じないかではなく、
きっと貴方の心のふるさとの風景がここにあります。

河童物語を読む

河童物語

小野英範


あの時の唐突でかつ霧に包まれたような経験は、50年余りたった今でも、未だに脳裏から離れることなく鮮明に残っている。

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きっとそのうちに、この記憶から画像が取り出せる時代が来るのかもしれない。そうなれば今から書き始めることが疑いのない真実であることが証明できるのだが・・・。いまはその時ではない。
その証拠に、今まで何人かの親しい友人たちに話したのだが、だれ一人信じてくれる人はいない。それどころか、あまり多くを話過ぎると、今までわたしが築きあげた信用すら失いかけてしまうのではないか、、という不安もあり、最近ではあまりこの件について口を開かないようにしている。
しかし、その事実は紛れもない事実であり、わたしが生まれ育ったこの笑楽の改装を機会に、文章に綴ることとする。


昭和41年の秋。
小学校1年生となったその少年は、ところどころ行く手を遮る水たまりをよけながら、片道4キロのでこぼこ道を跳ねるようにして家路についていた。朝晩はすでに冷え込みが始まった奥耶馬の郷に、そろそろ冬の訪れを感じながらも、雨後の日差しが木々の合間から差し込む、そんな午後のひとときであった。

少年は、4月1日に生まれた。早生まれの一番最後である。なのに卒業するのは1年前に生まれた同級生と同じであるから、ある意味生まれたときは親孝行な子供である。しかし、後年親に心配ばかりかけるため、とんでもない親孝行の子どもとなった。

田舎の小学校であるため同級生は21人でスタート、中学卒業時は16名までに減少した。その少年は早生まれのせいもあってか21人の同級生の中で常に一番前に並ばされた。
雨が振り、傘をさしながら歩いていると、「長靴が歩いてきた」とよく近所のおばさんたちにからかわれた、苦い思い出があった。

すでにお分かりだと思うが、この少年が私である。

話を戻そう。


その日はなぜか私は1人で下校していた。今でこそ、一人で下校させるなど誘拐されるのではないかと心配されるが、当時はそのようなことを考える親もおらず、ましてや家に鍵をかける習慣すらなかった。
実にのどかな農村である。


なぜひとり下校しているか?
恥ずかしながら、出された宿題をせずに居残りさせられたためである。

(この文章は自分の子供たちには見られたくないのであるが、事実を伝えなくてはこの話が進まないのであえて恥をさらしているところである。)


家まであと15分ほどの砂利道を右手に川を見ながら、憂鬱気味に、家路に向かっていた。
「なぜ遅くなったか?」と親に聞かれたらなんと言い訳しようか。宿題をしていなかったことをどう話そうかと考えながら、時に水たまりをよけ、時に砂利につまづきながら歩いていた。


道路から川までの距離はおよそ15メートル。
その川は山国川の支流に当たり、瀬戸内海にそそぐ河口には、大河ドラマで有名になった黒田官兵衛の居城「中津城」がある。

名前は知らないが、その川の中に大きな平たい石が横たわっている。恐らく、昔、がけ崩れで落ちてきたであろう巨大な石だ。この石が見えれば、あと3本カーブを曲がれば家が見えてくる。長かった「今日一日がようやく終わる。」子ども心にそう少年が毎日安堵の一息をつく場所であり、同時に最後の力を振り絞る目印であった。

しかし、この日はなにかが違った。

いつもと同じその名もない石の上に、何やら小さな「モノ」が見える。

石ではない。くさ、でもない。

周囲の森林の緑とは次元の違う色。緑深い緑色の「モノ」である。

少年は、最初は見間違ったかとおもい、2度ほ視点を外し、そしてまた戻すを繰り返した。

何か、「イキモノ」のように見える。

少年はもう一度、石のうえに視線を移し、丁寧にかつ恐る恐る見上げていくと、口があり、平たい頭がある・・・・・その瞬間、その「イキモノ」と少年の目と目が合った。

これは「カッパ」ではないか。

間違いない。
「カッパ」である。

小学1年生の子供にも日頃聞かされていた予備知識から、「カッパ」であることが確信できた。

見つめあう目と目、恐らく2−3秒であっただろうが、少年にとっては金縛りにあったように相当時間が止まっていた感覚である。

「あ、あ、ああ、、、(川に連れ込まれておぼれさせられる!)」

声にもならない声を喉の奥底から叫んだが、その声は川のせせらぎに打ち消された。そして、次の瞬間少年は一目散に駆け出した。

走りに走って、家の前の最後の橋を渡った時には、靴は泥だらけであった。


その頃の私の身長はやっと1メートルを超えたぐらいであったことを考えると、恐らくこのカッパは見た目50センチほどの大きさにしか見えなかった。
でも、なぜか家に帰ってもカッパに遭ったことは言わなかった。どうしてそれを言おうとしなかったのか、はたまた言えなかったのか。子ども心に誰も信じてもらえないだろうと考えていたのかもしれない。

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冒頭お伝えしたように、この「事実」を人に話すようになったのは30年以上の歳月が過ぎたあたりだったろうか。最初は何気なく話してみたものの、軽く一蹴された。

それから何気ないタイミングの中でこの話をし、カッパに遭遇した場所を案内したこともあったが、永い歳月で川の形もすっかり変わり、おまけに平成24年の九州北部豪雨でさらに川の形が変わってしまった。

あのカッパは今も生きているのだろうか。日本全国にあるカッパ伝説から考えるにカッパそのものは日本全国にいたはずであり、今もどこかにいるかもしれない。
ただ、今の劣悪な自然環境や生態系の乱れを考えるに、カッパにとっても厳しい現実があるのかもしれない。

今生きている日本人の中で唯一カッパを見たことにある人間かも知れない。そんな風に大げさに書けば、『このうそつき』と言われそうだが、純真無垢だったころにその少年が見たものは紛れもない「カッパ」であったと確信している。

そんな河童物語をこの笑楽に訪れる人に語り継ぐことが、私のこのカッパに対する敬意だと思い、筆をとった次第である。


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