相続の相談を受けていると、よくこんな質問をいただきます。

「どの分け方をしたら税金が一番安くなりますか?」

もちろん税理士として、その答えをお示しすることは大切な仕事です。

しかし、長年相続に関わっていると、私は別のことを考えるようになりました。

本当に大切なのは、税金を何万円減らしたかではなく、その後の生活が安心できるものになったかどうかではないかと思うのです。

先日もある相続案件で、税金だけを考えると有利になる分割方法がありました。

ところが、その方法を選んだ場合、不動産の管理や将来の修繕、固定資産税の負担などを一人で背負うことになります。

財産をもらうというと聞こえは良いのですが、不動産には維持する責任もついてきます。

アパートであれば空室の心配があります。

古くなれば修繕費も必要です。

いずれ解体しなければならない日も来るかもしれません。

そう考えると、「相続すること」が必ずしも幸せとは限りません。

一方で、現金や預金は毎日の生活を支えてくれます。

病院に行くときも、買い物をするときも、生活費を支払うときも、頼りになるのは現金です。

私は相続人の皆さんにこうお話しすることがあります。

「節税も大切ですが、十年後・二十年後に安心して暮らせることの方がもっと大切ではないでしょうか」

税金が少し増えたとしても、その代わり生活の不安が減るのであれば、その選択は十分価値のあるものだと思います。

相続は税金の計算だけではありません。

亡くなった方が残してくださった財産を、残されたご家族がどのように活かしていくかを考える機会でもあります。

だから私は、相続税の申告書を作るだけではなく、その後の人生もできるだけ想像しながらお話しをするようにしています。

節税も大切。

しかし、それ以上に大切なのはご家族の安心です。

その場の相続税だけではなく、その後の人生にも少し思いを巡らせる。

そんな相続のお手伝いをこれからも続けていきたいと思います。

そんなことを改めて考えさせてくれた相続案件でした。