現場でこんな話がありました。

若いスタッフが胸を張って言うんです。

「現金出納帳は毎日きっちり記帳しています!」

その言葉に、私は思わずうなずきました。 帳簿をつける習慣があるのは、とてもいいことです。

ところが次の瞬間、彼はさらりと言いました。

「でも、現金有高とは照合してません。だって面倒じゃないですか。」

……え、そこが本丸なんですけど。

記帳はしている。 数字は並んでいる。 達成感はある。 でも現金とは向き合っていない。

会計の世界では、記帳は「記録」、照合は「現実との対面」。 この二つがそろって初めて、数字は事実になります。

照合しない現金出納帳は、 もはや “現金がこうであってほしいという願望ノート”。 ファンタジー小説として読むなら楽しいかもしれませんが、決算には使えません。

現金の取扱いは、企業の内部統制の中でも最も基本的で、 かつ不正や誤謬が発生しやすい領域です。

だからこそ、記帳と照合はワンセットで運用されていなければなりません。

帳簿と実際有高が一致しているという事実は、企業の信頼性を支える “最初の安全装置” です。

面倒に見える照合こそが、内部統制の土台を静かに支えています。

数字は、向き合った者にだけ本当の姿を見せます。

現金出納帳は、その入り口です。

そこに神宿るです。