朝から雨が降っています。

一雨ごとに季節が進み、田んぼの色も少しずつ変わっていきます。

稲作を続けていると、物事は一気には変わらず、少しずつ形になっていくことを実感します。

会社経営も同じかもしれません。

先日、ある経営者の方からこんな話を聞きました。

「利益は出したいんですが、利益が出ると困ることもあるんです。」

最初は何のことだろうと思いました。

赤字より黒字の方が良いに決まっています。しかし話を聞くうちに、その気持ちがよく分かりました。

その会社は資本性ローンを活用していたのです。

資本性ローンは、金融機関が通常の借入金よりも自己資本に近いものとして評価してくれる制度です。

業績が厳しい時期でも資金調達がしやすくなり、会社の立て直しや事業の継続を支えてくれます。

また、業績が苦しい間は金利負担が低く抑えられ、元本返済も猶予されるケースが多く、経営者にとっては非常にありがたい制度です。

まさに会社が元気を取り戻すまで伴走してくれる仕組みと言えるでしょう。

ところが経営が改善し、利益が出るようになってくると状況が変わります。

利益が出れば金利が上がり、これまで据え置かれていた元本の返済も始まります。

つまり、

「利益が出て良かったですね」

という話の裏側で、

「さあ、これから返済も始まりますよ」

という話にもなるのです。

もちろん、これは悪いことではありません。

会社が正常な経営状態へ戻りつつある証拠だからです。

しかし経営者としては悩ましいところです。

利益を出したい。

でも手元のお金も残したい。

将来の設備更新や不測の事態にも備えたい。

そんな思いの間で揺れ動くことになります。

そこで大切なのは、利益だけを見ないことです。

会社にとって本当に大事なのは、事業がどれだけ現金を生み出しているかです。

決算書の利益も重要ですが、それ以上に会社が着実に体力を付けているかを見る必要があります。

農業で言えば、今年の収穫量だけではなく、来年の種も残し、機械も整備し、長く続けられる状態をつくることが大切なのと同じです。

目先の結果に一喜一憂するのではなく、数年先を見据えて判断する。

経営とは、その繰り返しなのだと思います。

資本性ローンは苦しい時期を支えてくれるありがたい制度です。

だからこそ、利益が出始めたときは「黒字か赤字か」だけではなく、「この先も安定して事業を続けられるか」という視点で考えることが大切なのでしょう。

雨音を聞きながら決算書を眺めていると、そんなことを考えさせられます。

経営も稲作も、一年だけ良ければよいというものではありません。

来年も、そのまた先も続いていくこと。

それが何より大切なのだと思います。